SIXIÈME GINZA MAGAZINE 039

カシミアをくれたモンゴルの土地と
遊牧民に恩返し(前編)

Interview with Oyuna Tserendorj

OYUNA(オユーナ)は、イギリス・ロンドン発のウィメンズウェア、ユニセックスウェア、ホームコレクションのブランド。デザイナーであるオユーナ・セレンドルジュさんの故郷、モンゴルの壮大な自然からインスパイアされた優美なコレクションが新たな豊かさの価値を生み出しています。コンテンポラリーで洗練されたデザインは、最高級カシミアのしっとりとした柔らかさを際立たせ、私たちを魅了してやみません。モンゴルの遊牧民の生活向上や、環境保護の活動にも積極的なオユーナさんに、ブランドのこと、モンゴルへの思いなどについて伺いました。

 

OYUNAの起源はモンゴルの大平原。カシミアを紡ぐモンゴルの職人達の手の温もりを感じさせるコレクションに身を包むと、その柔らかさ、優しさに触れ、気持ちが安らぎます。2002年、ロンドンに設立。カシミアを主な素材に、日常のあらゆるシーンを彩る、美しく実用的なラグジュアリーを提案しているOYUNA。デザイナーのオユーナ・セレンドルジュさんは「カシミアをくれたモンゴルの土地と遊牧民に常に恩返しをし、私の人生の中で関わる人々に光を与えるために、刺激と勇気を与えるようなデザインをしたい」と語っています。世界で最も貴重で希少性の高い天然素材のひとつであるモンゴルカシミア。その柔らかで暖かな素材の可能性を広げ、モダンで都会的な、着る人に自信を与えてくれる、真のサステナブルなマインドを持つブランドです。

モンゴルの土地とその遊牧文化の保全は、ブランドが誕生して以来、大切にされているテーマです。気候変動や過剰放牧の結果としてモンゴルの草原への脅威が問題となっている中、OYUNAは遊牧民と協力してカシミアのライフサイクルを追跡し、土地の保全に役立てる画期的なプログラムにも取り組んでいます。「世界中の人々が感動するカシミアがモンゴルにはあります」と言うオユーナさんに今のロンドンのこと、ご自身のことなどをQ&Aで質問させていただきました。ロンドン時間9:00、日本時間17:00のオンラインインタビューです。

Q   ロックダウンもあったイギリスですが、近頃では少しずつ日常が取り戻されつつあるようですね?

ロックダウンという響きはとても嫌なものですが、私にとっては楽しい期間でもありました。ソフトなエネルギーのようなものを感じました。鳥のさえずりを聞いてただ座っているのも美しい時間でした。近所の方々と親しくなれたことも嬉しかったです。人々は椅子を家の前に出して、通る人と話をしたり手を振りあったり、お茶をしたり。ほとんどのご近所さんと知り合いになって、仲の良い友達もできました。ロックダウンにも、ポジティブな側面があったのだと思います。家族や友人とはzoomでつながりあっていました。5歳の息子はスイスに住む彼の祖母とzoomで一緒に絵を描いたり。コロナ以前の生活スピードは早くて、皆が忙しく動き回っていましたから。

ロックダウンが終わると車の交通量も増えて道は騒音も増えて、以前の日常の忙しなさに初めて気づかされました。あれ、普段はこんなだったかなと。全てが徐々に日常に戻ってきました。

Q   旅好きなオユーナさんですが、自由に行動が出来ない今の状況をどう感じていらっしゃいますか?

ロックダウンの前は、頻繁に旅をして動き回っていました。コロナ後は、自分でも信じられないことなのですが、もう1年2ヶ月もイギリスを出ていません。昨年3月のパリコレ以来、一切移動していません。不思議なことに今は海外に行きたいとは思わないのです。ロックダウンの後はイギリス国内を巡ってこの国の圧倒的な美しさを知りました。中でも、山々をハイキングしたのは楽しかったです。Ancient woodland(古代の森)は1600年から続く、手付かずの森林地帯で、何百年もの間、木に覆われていた大自然の森でそれは素晴らしい場所です。そのほか、湖で泳いだり、カントリーサイドに行って古いお城を見たり。この国は豊かな自然と、歴史的なもので溢れているのです。

Q   昨年お店がオープンしたそうですね?

ロックダウンの間にショップをオープンするなんて挑戦ですよね。でも、直接お客様と会って、私のお客様同士が友達になっていくのを見るのは素敵な経験でした。クリエイティブで、自由なエネルギーで溢れていました。ショップを構えたポートベローエリアにはポルトガル系ベーカリーやモロッココミュニティがあって、活気にあふれたとても可愛い街なのです。

Q   オユーナさんがファッションを志されたきっかけ、ブランド立ち上げまでの経緯を教えてください。

洋服のデザインを学びたいと思い、まずはハンガリーに留学しました。当時の制度では社会主義国にしか留学できなかったからです。2002年にホームプロダクトのブランドをロンドンで立ち上げることになったのですが、当時のロンドンはクラシックなインテリアか、タータンチェックなどを使ったスコットランド風のデザインの2つしかありませんでした。そこで、コンテンポラリーなデザインのホームプロダクトがあればいいな、とシンプルで素材の良さを生かしたブランドを立ち上げました。モンゴルカシミアの素材を生かしたホームプロダクトでした。立ち上げ当初は世界の人たちからは、私は日本人みたいな名前で日本人のようなルックスということで日本のブランドだと思われていたこともあったようです。そんな中、日本の方々は私たちのブランドの美学を最初に理解いただき、インテリア企業などが買い付けをしてくれるなど、ご縁がありました。

インタビュー後半へ続きます

 

OYUNA デザイナー

Oyuna Tserendorj(オユーナ・セレンドルジュ)

OYUNAデザイナー。モンゴル生まれ。ハンガリーでファッションテクノロジーを学び、その後、英国のセントラル・セント・マーチンズのプロダクトデザインのコースに入学。2002年、ロンドンで100%カシミアのホームコレクションブランドをスタートさせ、現在は、ウィメンズウエア、ユニセックスウェア、トラベル、ホームコレクションなどを展開。

https://oyuna.com/