SIXIÈME GINZA MAGAZINE 025

“気持ちいいもの”に偏る(後編)

Interview with YOKO YAMAFUJI

各方面でご活躍されているSIXIÈME GINZA世代の方々をお招きし、これまでの生き方や仕事に対する姿勢、一人の女性としてのマインドなどをお話しいただくこのコーナー。今回はSIXIÈME GINZAのMDディレクターを務める佐々木が聞き手となって、ライフスタイルコーディネーターであり、サロン「HEIGHTS(ハイツ)」オーナー YORK.代表の山藤陽子さんにお話を伺いました。

五感を刺激する“気持ちいいもの”を独自の審美眼でセレクトする山藤さん。SCENT(香り)デザイン、ブランドコンサルティング、化粧品の商品企画などを手がけるかたわら、「HEIGHTS」ではパーソナルなカウンセリングも行われています。彼女の柔らかな雰囲気としなやかな感性は、女性たちの憧れ。サロンを訪れるファンは後を絶ちません。山藤さんに、大人の感性の磨き方、美しくあり続けるための秘訣について教えていただきました。

 

本当の“気持ちいい”を見極めるには

どのようなマインドを持っていれば、自分にとっての本当の気持ちいいものに出会えるのでしょうか。常に研ぎ澄まされた感覚を持つための秘策はあるのでしょうか。
「見た目がかっこいいとか、この色が綺麗というのは、自分の中のトレンドで変わります。でも、気持ちいいことは直接身体に素直に作用するものです。例えば、いい香りを嗅ぐと“ああ、いい匂い”と言って深呼吸しますよね。呼吸が深くなると、とても自律神経が整います。一つ深呼吸するだけで、ああ気持ちいいなという気分になるはずです。自分の周りにはどれだけ気持ちいいことがあるのかな?これは私にとって気持ちがいいの?と問いながらモノを手に取ることが大切だと思うのです。そうすると呼吸が深くなり、自律神経が整い、睡眠が深くなり、肌が綺麗になって調子が良くなって仕事がバリバリできる。そうすると人にも優しくできる、という全てにおいて気持ち良くなるという連鎖が生まれてくるはずです」(山藤)。
香り以外にも、目で見て美しいものも気持ちいい、耳で聞く音楽も気持ちいい、肌に触れて気持ちいい、でもデザインがダサかったら気持ち良くないなど「自分にとってこれは気持ちいいのかな?」と五感を使っていつも自分に問いながら買うことが大切なのだと山藤さんはおっしゃいます。

「どうして気持ちいいのかというポイントも考えながら選んでいます。選んでいるものが自然とナチュラルなものやオーガニックなものが多いので、それは地球環境にも優しい。結局そこにも繋がるのではないかなと思います。自分にとって気持ちいいというのは個人的でパーソナルなことですが、社会や世界に繋がる幅広いことでもあります。いいものを消費すれば、気持ちいいものを作る人たちの生活が潤う。そこがもの選びの物差しにもなっています。ものを選ぶ基準が欲しい方はそういう目線で選んでみてはいかがでしょうか?」(山藤)。

まずは自分の感覚を信じて、自分にとってこれは気持ちいいのか、気持ちよくないのかを問いながら選ぶことで、自分にとっての最高のものを見つけられるしなやかな感性が養われるようです。

 

女性であることを意識する

今の時代、女性だから、男性だからと性別を意識することが半ばタブーとなり、性差がフラットになってきました。「すべてがフラットな時代ですが、私は敢えて性別を意識することが大切だと思っています。女性ホルモンは残念ながら減ってしまうので、ずっと意識し続けることが大切です。女性であることを意識するためには、ローズやイランイラン、ジャスミンなどの女性ホルモンを活性化させてくれる香りが最適です。香りはちょっとした気づき、スイッチを入れるものとして必要だと思います」(山藤)。

女性らしさを解放するのが躊躇される現代ですが、女をセーブするとますます女性らしさが失われてしまうそうです。「時には女性を解放して、出してあげることが必要です。意識するだけで変わり始めるはずですから。例えば家で寝るまでの3時間、シルクのルームウェアで過ごすのとスウェットを着るのとでは、身のこなしも変わると思いますよ」。

肌感覚も女性の方が敏感で、さらに年齢によって変化するそうです。「若い頃は自らがエネルギーを発しているので受けることには鈍感です。だから、多少肌触りの悪いニットを着ていても何とも感じません。それが、年を取ってからは肌感覚が敏感になり、チクチクしたものが苦手になり、カシミアの柔らかさに身を包みたくなりますよね。発するものが減ると、受け取るものが多くなる。大人になればなるほど、感度が上がるのです。男性もそうだと思いますよ」(山藤)

「いいえ、男性の8割は鈍感になっていると思いますよ、僕も含めて(笑)。男性って可哀想なのですよ、そういう意味ではね」(佐々木)。

 

肌も体も心も柔らかく

素敵に年を重ねられてきた山藤さんですが、若い頃と比べて考え方で変わったところ、変わらなかったところは何でしょうか?「こうあるべき、というのが若い頃にはありました。でも、出来ないことと出来ることを色々経験して、常に決めつけないで柔軟な姿勢でいることが大切だなと思うようになりました。目指しているのは“肌も体も心も柔らかく”。大人は成功・失敗体験を多く重ねているので、これをしたらこうなるという決めつけが増えます。でも、考え方が凝り固まってしまうと、新しいものが入ってこない。それは自分にとって素敵に思えないし、魅力的に見えないなと、若い頃に気が付きました。それ以来、柔らかくあるように心がけています」。

常に意識して柔らかくしていないと、体と同じで心も固くなってしまう。新しい考え方やアイデアに対してどう反応するのかも心の柔らかさで違ってくるそうです。
「年齢とともに固くなるものを常に柔らかくするように心がけています。肌も柔らかくないと化粧水が入らないし、運動不足で体が硬いと血流が悪くなる。魅力的な先輩方を見て学んだことです」。

SIXIÈME GINZAが大切にしているキーワードは本物、上質、一流。山藤さんにとってのそれらの言葉はどのような意味なのでしょうか。「自分の大切にしていることの軸がブレないこと、それが本物であり上質であると思います。それは生き方であったり暮らし方であったりしますが、それが全てのクリエイションに還元されると信じています。これが流行っているからこちら、次はこちらとブレが出ると困惑しますよね。表面上何かが変わっても、大切なものが変わらない圧倒的なブレない軸があればその人のことを信用できますよね」。

流行が目まぐるしく変化する中でも、どこかに確固たるものがあり、大切にしていることがある人は魅力的です。何があっても変えないブレない軸と、新しいことを受け入れる柔らかな心を持つ山藤さん。芯の強さと、それを包み込むしなやかな感性が、彼女の優しくホッとする佇まいを生み出しているものなのだ、と感じました。

 

8月28日(水)〜9月10日(火)
partiality store YORK. POP UP EVENT開催。
山藤 陽子氏の南青山にあるプライベートサロン「HEIGHTS」にて取り扱いのある、“気持ちいいもの”にまつわるものを中心に「暮らしについての気づき、日常の大人の時間」に寄り添うアイテムをセレクトしたPOP UP EVENTを開催いたします。
詳細はこちらをご覧ください。

 

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HEIGHTSオーナー / YORK.代表

山藤 陽子(やまふじ ようこ)

英国オーガニックブランドにてリテール部門の統括を経て独立後「YORK.」を立ち上げる。上質で気持ちいい暮らしと生き方をテーマにブランドコンサルティング、商品企画開発、パフューマーとして施設の空間デザインや舞台演出としての調香も手がける。東京南青山にアポイント制のサロン「HEIGHTS」をオープン、現在に至る。

http://york-tokyo.com/
Instagram @heights_yokoyamafuji