SIXIÈME GINZA MAGAZINE 016

ファッションとカラーの狭間で

Interview with Reiko Ono

パーソナルスタイリストとしてご活躍される小野玲子さんが、いままでに出会ったお客さまは10,000人以上。ファッションとカラーは密接ですが、意外にも自分に似合う色を知っている方はそう多くないそうです。似合う色を理論的かつ豊かな感性で導き出す小野さんに、そのユニークな手法や色選びのコツを伺いました。

 

肌は色に反応する

ベレー帽を被り、布地にこだわって洋服を仕立てていたというお父さまと、得意の洋裁で娘のお洋服や着せ替え人形の衣装を作っていたというお母さまの元に育ち、洋服とはコーディネイトを考えて着るものだという認識が育まれたと話す小野さん。色との出会いは、のちに色のパイオニアと呼ばれた、大学時代の友人、今岡早絵子さんとの出会いに始まります。今岡さんは、当時のカラービジネス発祥の地でもあった米国のサンフランシスコで、肌の色が異なる人種別のカラーシステムを修得し、その中から「日本人とアジア人」のカラータイプを日本に持ち帰りました。小野さんもこのメソッドを日本で本格的に広めるために尽力することになり、それまで身近だったファッションと色の世界がつながっていきます。美術や芸術も好きだった小野さんにとって、学んだ理論を活かしながら、肌の色に合わせて感性で色を選ぶというプロセスがとても腑に落ちました。7年前、突然に訪れた今岡さんとの早すぎるお別れが、カラーシステムをファッションビジネスの業界に根づかせたいという小野さんの想いを一層強くし、2012年に「株式会社日本モードカラー研究所」を設立。大丸松坂屋をはじめとする百貨店やラグジュアリーブランドの顧客向けにパーソナルスタイリングを行い、企業の商品開発のカラーコンサルティングや人材育成を数多く手がけてきました。

小野さんがパーソナルスタイリングに用いるカラーシステムとはどのようなものなのでしょうか。色には「アンダートーン」と呼ばれる基調色があり、青みの「Cool」と黄みの「Warm」、青みも黄みも帯びていない中間色「Neutral」の3つに分類されます。「寒色と暖色と聞くと、寒色は青系統の色、暖色は赤や橙、黄色などをイメージしますが、青ひとつとっても青みを帯びた青と、黄みを帯びた青、そのどちらにも寄っていない場合があります。また、配色のコーディネイトも、Aの色を単色で見るのと、傍にほかの色を置いて見るのとでは、明らかに違う色合いに見えるので、こういった色彩学の理論を活用して、その方の肌に合う色を見つけます。現代建築・美術の草分けと言われるドイツのバウハウスでは、世界中から集まった学生たちが、皆、自分が生来持っている色調(肌や瞳、髪の色)に近い色を用いて絵を描いたというエピソードがあり、これは自身と親和性の高い色が感性に刷り込まれている可能性を示唆しています。肌に合う色を当てると肌はより透き通って見えますが、肌に合わない色を当てると濁って見えてしまいます。実際に肌色が変わっているわけではありませんが、色相対比で反応してそう見えるのですね」。

色がもたらす作用は、心と身体を切り離して考えることはできません、と語る小野さん。一般的には視覚情報が8割を占めると言われますが、料理を食べるときに、目で見て、香りを嗅いで、舌で味わい、五感のすべてで美味しいと感じるのと同じく、色も素材や質感、ディテールなどを含む情報を集めて、五感を総動員してひとつのこととして捉えられるそうです。最近では五感で感じ取ったものがホルモン分泌を促すという研究結果も出ていて、そこには見た目や好みだけに留まらない色の効果がありそうです。

理論的に感性を引き出す

SIXIÈME GINZAの店頭でも、月に5日間「パーソナルスタイリング」を承っています。カウンセリングのプロセスは、まず色のお好みを伺い、次に、お好きな色から導き出される性質を参考に配色の組み合わせを考えていきます。女性の場合、同じ色を着ても骨格や肉づきで印象が変わり、胸の開き具合などのデザインによっても違うので、組み合わせは千差万別です。とりわけ、色の好みは主観に頼る部分も大きいので、図らずもお客さまの感性を引き出すことになりますが、初めて会うひとに話すには繊細な話題でもあるので、あくまで理論的に進めることで、いかに感性を引き出すことができるかが鍵となります。

最も多いご相談は、「着丈のバランス」「体型カバー」「差し色の取り入れ方」だそうで、なかでも差し色の取り入れ方については、小野さんの知識と経験が最も活かされる場面です。小野さんが必ずお客さまにお伺いする5つの質問は、「好きな色」「苦手な色」「最近気になっている色」「ワードローブに多い色」「ご職業」。最近気になっている色からは、往々にしてそのときのお客さまの状況が表れる、と語る小野さん。もちろんお好みの色と同じ場合もあれば、変化を望まれている場合はまったく違う色になる場合もあります。また、ご職業は、お探しのお洋服をどのようなシーンでお召しになるのかによって、ご紹介するアイテムが異なるから。これらの回答を鑑みながら、お客さまに似合う色を見つけるお手伝いをします。まず、お客さまの肌色が「Cool」「Warm」「Neutral」のどれに当てはまるのかを見極めます。次に、「カラードレープ」と呼ばれる布地の色見本を胸元にあてて、お顔映りを見ながらベーシックカラー(ブラック、ネイビー、グレー、ベージュ、ホワイトなど)の色調を見極めます。そこに小物やアクセサリーなどで取り入れる差し色と、メイクカラーをご説明していくという流れです。お似合いの色が見つかったら、素材や質感に留意しながら、店内にあるアイテムをコーディネイトしてご提案します。その時に大切なのは、できるだけ多く「フィッティング」していただくこと。ご自身で似合う色を感じていただくのが一番の近道。そこへお客さまのご要望に応じて明確にアドバイスをして差し上げることが、その後の信頼に繋がっているように感じる、と小野さんは言います。

「SIXIÈME GINZAのお客さまは本物に触れていらした方が多く、ご自身に似合うものもよくご存知なので、通り一遍の商品情報だけでは通用しません。SIXIÈME GINZAの感性でセレクトした品揃えの中から、お客さまそれぞれの本来の美しさやセンスが引き立つような商品に出会うことで、『お客さまご自身のスタイルづくり』をお手伝いするのが、私の役割だと思っています。お客さまが客観的な感想をお求めの場合には、自信をもって助言を差し上げられるよう、常に店内のアイテムに関心を持って備えています。また、ご自身で選ばれたいという方もいらっしゃるので、お見立てする色がお客さまのお好みやご要望から離れてしまう場合は、素材の質感やデザインで調整しながらご提案しています。たとえば、年齢を重ねるにつれて肌とのコントラストがより強く感じられる黒も、カシミアやベロア、スウェードのような素材を選べばソフトな印象になりますし、インナーやパンツ、スカーフなどの小物類と合わせて、全体のコーディネイトとしてお見せすることで、想像していただきやすいご提案を心がけています」。

小野さんが一番嬉しいと感じるのは、お客さまがコーディネイトをお気に召されたときに「このままどこかに出かけたい」「誰かに会いたい」など、何か次の行動に移したいとお感じになり、そのワクワクするお気持ちを販売スタッフと共に共有させていただけるときだそう。外見が変わったことでお気持ちに変化があったという方々からは、ご成婚や、お仕事の幅が広がった、ご病気のあとに元気を取り戻すことができた、というような嬉しいご報告もあったそうです。パーソナルスタイリングというお仕事は、お客さまに似合う色を見つけるだけでなく、お客さまが求めていらっしゃることをヒアリングして察知できなくてはなりません。理論(左脳)と感性(右脳)の両方を持ち合わせている小野さんだからこそ可能なアドバイスなのだと感じました。

 

感性を磨くための方法

ライフステージが変わっても、唯一変わらないのはとにかく好奇心旺盛なこと。ご自宅ではインターネットラジオなどを活用して常に音楽を流し、自分の持っているものだけでなく、常に新しいものにも触れられるようにしているそう。そのほかにも、好きな香りを焚いたり、本を読んだり、映画を観たり、気になるアートがあれば美術館やギャラリーにも足を運びます。最近は、よく歩くようになったと話す小野さん。歩くことで見えてくる風景やディテールに目が留まるようになったそうです。いつでも歩けるようにとヒールを履かなくなったことから、女性らしいエッセンスを醸すレースやリボンをファッションのどこかに入れるようにしています。

最新のファッションはインターネットなどで昔よりもずっと情報をキャッチしやすくなった昨今ですが、街中でのピープルウォッチングも重要な仕事、とも。「百貨店などでもたくさんの方にお会いしますし、そこで観察力と洞察力が養われます。インプットせずしてアウトプットはできません。おしゃれな方は、すべてのバランスが上手に取れているんですね。丈(着丈そのものや、合わせるアイテムとのバランスなど)、色(大きく見える色、小さく見える色など)、重さ(デコルテの開き具合、襟の抜き具合、手首や甲の出し方など)のバランスが取れていると、洗練されて見えます。また、色、質感、形は三位一体で、色だけでモノを選ぶことはできません。自然界のなかには参考になるヒントが散りばめられているので、常に周囲に関心を持って、それぞれの違いを感じ取る感性を磨くことが大切だと思います」。

麗らかな春の陽射しが降り注ぐこれからの季節には、明るくやわらかな色調のアイテムや、花びらのように薄くて繊細な素材のものが出揃います。一見、難易度の高いパステル調のアイテムを着こなすためにはどうしたらよいのか、小野さんにおすすめの取り入れ方を伺ってみました。「ベーシックカラーと合わせることで、パステルカラーもぐんと取り入れやすくなります。アイシーブルーやラベンダーピンクなどのパステルカラーはボトムスに持ってきて、トップスにベージュや、ネイビー、グレーなどを合わせ、靴やバッグ、イアリングに赤などの色ものを持ってくるのもよいですね。お似合いの差し色を見つけるなら、ぜひSIXIÈME GINZAの店頭『パーソナルスタイリング』をご活用ください」。

一方で、ご自身のお洋服選びは「シーズンレス」だと語る小野さん。もちろんお仕事柄シーズンのトレンドは抑えるようにしていますが、季節の流行色だから取り入れるということではなく、体感で着たい素材や質感のものを自分の似合う色で取り入れるようにするそう。SIXIÈME GINZAのお客さまへのおすすすめは「2回楽しむ」こと。シーズンの前に出てくるアイテムたちを眺めながら、暖かくなったらこれを着たいなどと想像して楽しみ、2回目は実際に着られる時期に身に纏って楽しむ。これこそゆとりあるシジェーム世代ならではのおしゃれの楽しみ方と言えそうです。

 

 

SIXIÈME GINZAのコンセプトである[本物][上質][一流]についても伺ってみました。「[本物]というのは唯一無二のもので、コンセプトがぶれないこと。それは視覚から入ってくる色や質感やデザインからも感じられるものだと思います。[上質]というのは、その本物を着たり持ったりすることで心が満たされたり、高揚したりして感じられること。[一流]というのは、本物と上質を併せ持ったものではないかと思います」。

最後に、ファッションを横断的に見て、ご自身の感性で選び、お客さまにご提案する、パーソナルスタイリストの小野さんにとって、ファッションとはどのような存在なのでしょうか。「好きとしか言いようがなくて、自分の幸せを表現できるものであり、お客さまご自身にも幸せを感じていただけるものになればよいなと思って携わっています。いままでにわたしが出会ってきた10,000人のお客さまとの経験がわたしの中に蓄積されていますので、ぜひSIXIÈME GINZAの店頭にお運びいただいて、パーソナルスタイリングのサービスをご活用ください。ひとりでも多くの方がご自身を輝かせるアイテムと出会い、幸せになっていただけたら嬉しいです」。

 

【SIXIÈME GINZAパーソナルスタイリング】開催日
ご予約は直接店舗までご連絡ください(予約制・無料)。
2月19日(月)〜23日(金)
3月26日(月)〜30日(金)
4月9日(月)〜13日(金)
5月7日(月)〜11日(金)
6月12日(火)〜16日(土)
<お問い合わせ> SIXIÈME GINZA  tel:03-6263-9866

 

パーソナルスタイリスト

小野 玲子(おの れいこ)

STYLING DIRECTOR、株式会社モードカラー研究所 代表取締役、財団法人日本色彩研究所認定色彩指導者。20年以上に渡り、大手百貨店やラグジュアリーブランドでお客さまひとりひとりに合った「スタイルづくり」の提案を行う。出会ったお客さまは10,000人を超える。百貨店、化粧品会社の社員研修なども積極的に行い、豊かで快適なライフスタイルを提案するプロフェッショナルの養成に力を注いでいる。
[主な経歴]大丸心斎橋店 パーソナルスタイリングサービス監修、ゼニアジャパン カラーコンサルタント、ヴァレンティノジャパン ファッションコンサルタント、バンタンデザイン研究所 ファッションデザイン科講師、アルソア化粧品 カラー&イメージ講座講師、ほか。