SIXIÈME GINZA MAGAZINE 006

Eat for Happiness.

Interview with Yuri Nomura

食を巡る旅

私たちの大きな愉しみの一つに“食べる”ということがあります。“口福”という言葉があるように、美味しいものを食べているときに、人は幸せを感じるというのは真実だと思います。
そんな“食”を真ん中に置きながら、その素材の出所、食べる環境、人とのつながりなどを総合的に考えプロデュースされる、フードディレクターの野村友里さん。運営されている東京原宿の“restaurant eatrip”にお邪魔して、お話をお伺いすることができました。
「私が食を中心に仕事するようになったのも、ある種、偶然が重なったような気がします。正直に言って、これまであまり計画とかをしたことがなくて、ただ料理が好きというのが出発点にあるだけです。ある時、書籍のオファーも頂くようになったのですが、私はまだそこまで行っていないと思って、料理の本を出すのではなく、人はどうやって食べて、どういう生き方で“食”を取り入れていくのかというのを伝えてみようと考えたのが、ドキュメンタリー映画『eatrip』だったのです。いざ映画を作ろうとなったら、それまで出会った様々な分野の人たちが集まってくれて、私の無謀な試みをヘルプしてくれました」。
あくまで自然体で、しかし一つ一つの疑問や興味のあることについて、直感でストレートに向き合うのが野村さん流のようです。
「そこで気がついたのは“料理”や“食”というものはコミュニケーションだなということでした。そこにある空気までも食の一部として考えられたらいいなと。ある人の言葉で“空気には時間も溶け込んでいる”というのがあって、このレストランを作ったのも長い年月かけて様々な活動を通したくさんのご縁が繋がってきた結果なのかなと、これもeatripだなと思うのです」。

アイデアを書き留めるということ

「私の料理は、まず食材と対話するところから始まっています。色を活かしたり、食べて美味しい食材があったらそれをサブからメインに昇格させて、たくさん食べられるように考えたり。食材が色々と教えてくれる感じです。そんなときに生まれたアイデアは、下手なんですがノートに絵を描いていました。昔のノートを見返すとあまり変わっていないなと思うこともあります。それでというわけではないのですが、最近は言葉を書き留めるようになりました。それも単語だったり、人の言葉だったり、その時々に気になることを小さなノートに書き留めるようにしています。それを見返すというよりも、書くことで頭の中にイメージのようなものが出来上がって、自分の中に確かな感情が生まれてくるように感じます」。
“食”をコミュニケーションとして考える野村さんは、これまでの活動もこれからの活動も一つの流れとして考えられています。ノートに書き留められた言葉たちや、絵も野村さんの軌跡を映し出しているのでしょうか。

「ここにくるお客様たちにも、特別な何かではなく、自然体で素敵だなと感じていただきたいと思っています」。
自然体。大人の女性として、自分の本音と向き合いながら、ときにその時々の気になることをノートに書き留める。絵が下手でもいいだろうし、単語やフレーズだけでもいいだろうし。まずお気に入りのノートをバッグにしのばせ、自分自身の自然体の感情と向き合うきっかけを作ることも大事なのかもしれません。

「30代、40代と様々なことに挑戦しましたが、改めて見返すとどこか自分のやってきたことには一貫性があるように思います。大人になるということは、自分で自分の顔を作ることだと思うので、どれだけいい顔になっているかだと思います。そのためには、出会いを大切にし、それぞれの“個”も大事にしながら繋がっていく。そうすることで、“いい顔の50代”がやってくるのだと考えています」。

restaurant eatripの柔らかい光の中での野村さんとの緩やかな対話は、私たち大人の女性にとって、自然体でいられることの「幸福」を改めて認識させてくれるものでした。もちろん、とびきり美味しいお食事とともに。

YOCOイラストデザインの
メモ帳とメッセージカード

ふとした日常で気になったことを、いつでもすぐに書き留められるサイズのメモ帳をバッグの中に忍ばせておきたい。それもいつでも自信を持ってバッグから出せるおしゃれなものを。
今回、イラストレーターのYOCO(永宮 陽子)氏と「SIXIÈME GINZA」がコラボレーションし、オリジナル商品が出来上がりました。「銀座」の象徴的な街並みと「銀座松坂屋」がもと営業していた街であった歴史をモチーフに取り入れ、YOCO(永宮 陽子)氏らしい繊細なタッチで仕上げられたイラストの入ったノートとメモ帳。
あなたが感じ取った瞬間、気になった日常をぜひ書き留めてみて下さい。
大人の女性が大切にしていること。それは、“気持ちを伝える”“気持ちを贈る”こと。
そんな時にぴったりなメッセージカードもYOCO(永宮 陽子)氏の愛らしいイラストがデザインされ、贈られた方の笑顔が浮かびます。

フードディレクター/フードクリエイティブチーム「eatrip」主宰

野村 友里(のむら ゆり)

長年おもてなし教室を開いていた母の影響で自然と料理の道へ。
1998年渡英しいくつかのレストランを経験し帰国。初監督作品となる食のドキュメンタリー映画 『eatrip』 を手がける。その後渡米しオーガニックレストラン「シェ・パニース」のシェフたちと主に2011年「生産者」「料理人」「消費者」をつなぐ参加型の食とアートのイベントを開催。帰国後はその経験を活かし日本のシェフたちとともに、“nomadic kitchen” プロジェクトを始めた。翌2012年には東京原宿に、豊かな緑と光と風に恵まれた「restaurant eatrip」をオープン。
主な活動として、レセプションパーティなどのケータリングフードの演出や、料理教室、雑誌の連載、ラジオ番組、TVやCMのフードディレクション等。それらを通して食の可能性を多岐に渡って表現し、その愉しさを伝えて続けている。